全般
為替市場
先週も為替市場は米国内の経済指標でドルが変動する展開となった。
中国の景気不安なども安全資産のドル買いに繋がるので、米ドルの動きに翻弄される形。
23日(水)発表のユーロ圏と米国の8月総合PMI速報値は市場予想を下回り、世界的に金利低下圧力がかかりドル売り要因になった。しかし、24日(木)発表の米新規失業保険申請件数は予想を下回り、ボストン連銀のコリンズ総裁が追加利上げの必要性について言及すると再びドル買いが優勢になった。
先週に一番注目されたジャクソンホールは終わってみれば無難通過。
当日までの曖昧な不安を抱えた月~木曜までが落ち着かない展開が続いた。
今週は米国で経済指標が多く発表される。
週内の経済指標の発表ごとに金利やドルは変動するだろうが、結局は週末大トリの「雇用統計」を睨んで推移。
一方向には動きにくいだろう。
8月29日
米8月消費者信頼感指数
8月30日
米4-6月期国内総生産改定値
ADP雇用統計
8月31日
米7月PCEコア価格指数
9月1日
米8月雇用統計
ADP雇用統計は雇用統計の前に発表されるから注目されるが、雇用統計の数値と連動もしていない。
しかし毎回市場が大きく反応してしまう厄介な指標。
また週次のことではあるが、新規失業保険申請件数も毎度波乱を引き起こす印象。
金利が低下して安心していても、この数値で労働需給のひっ迫が見えて木曜に金利変動するパターンが懸念される。
米国以外では、8月31日発表のユーロ圏8月消費者物価コア指数に注目が集まる。
事前予想は7月実績を下回る見込み。ECBの追加利上げ期待が弱くなればユーロ売りにつながるか。
先週の総合PMIは欧州が弱い結果となった、先月も弱さに驚いたが欧州の経済鈍化懸念はユーロ買い期待を弱めるだろう。
先週末のジャクソンホールではラガルド総裁は案外タカ派なスタンスを示したようだ。
米国より遅れて利上げを開始したECBだが、経済の弱さを見ると米国より長く利上げが続く期待は薄いように思う。
米市場
前週末に注目のジャクソンホールでのパウエル議長の講演は無難通過。
前日までと講演中には不安定な動きだったが、終わってみれば「FOMCの時と変わらんよね」という雰囲気に。
事前にわかっているイベントに対して、備えるポジションが金利や株式を揺らす傾向は今年特に顕著となっているように感じる。
今週は重要な経済指標が多数あり、動きにくい展開が続きそうだ。
おおまかなところは為替市場のところに書いた通りである。
週末の鳳である雇用統計を睨んで、一進一退となるだろう。
先週のもう1つの注目材料のエヌビディア決算は大変力強いものだった。
しかし翌日に地合いが悪化して、決算反応は小幅高、金曜日は2%台の下落と決算が好感された動きは見られていない。
見通しも強く偉大な企業だとは思うが、株価的には現状金利では目一杯ということだろうか。
翌週の9/4(月)は米国がレーバーデーで休場となる。
ここで米国はサマーバカンスが終了すると言われている。
「レーバーデー明けは荒れる」という相場格言があるので、物色の流れが変わる可能性があるかもしれない。
ちなみにシーズナルで見ると米国株は9月も弱い傾向がある。
あまり明るい展望が抱けないスケジュールになっていると感じる。
9月FOMCは19~20日に予定されている。
雇用統計が終わってもCPI、FOMCと様子見材料が続きそうだ。
日本市場
先週の日本市場は前の週の4桁下落からの反発が月曜~木曜まで続いた。
連日3桁上昇で32,000円台を奪還、75日線を回復し25日線に肉薄する展開となった。
しかし木曜までの楽観ムードは金曜にほぼ打ちのめされることに。
ジャクソンホール前のリスクオフとエヌビディア決算出尽くしが大きく響いた。
木曜までの貯金があったので、週間では上昇したが引け味は悪かった。(木曜まで837円高-金曜に662円下落=173円高)
なおパウエル議長講演は無難に通過、今週はこの織り込みから反発して始まりそうだ。
先週金曜日の米国株は3指数とも上昇し、特にハイテク中心の上昇だった。
しかしエヌビディアは2%台の下落になっている。
日本市場で前週金曜の大幅下落は半導体株安が主因だったが、その戻りは限られるスタートとなるかも。
月曜の織り込み以降も今週の日本市場は一進一退が予想される。
米国で経済指標の発表が多く、指標を受けた金利に米国市場が反応し、日本は翌日それに振らされる流れか。
週末の雇用統計まで落ち着かない展開が続くだろう。
ちなみに雇用統計の翌日がレーバーデーで米国休場なので、金曜の日本市場は特に動きにくいだろう。
東証プライムの売買代金は6日連続で2兆円台で夏枯れの様相。
米国投資家はレーバーで明けに帰ってくると思うと、今週も出来高は増えないことが予想される。
引き続き薄商いの中を先物主導で振らされる展開は想定しておいた方が良さそうだ。
上昇したとしても売買代金が薄いと仮の動きとしか見られないだろう。
相場は9月に突入するが、この週か翌週に秋の日経平均株価の定期入れ替えが発表される可能性がある。
関連銘柄を予想した買いが活発になりそうだ。
仮に半導体が軟調な週となっても、採用が噂されるレーザーテックやディスコは独自の動きを見せるかもしれない。
日本取引所グループによると、海外投資家は8月第3週(14-18日)、日本株を現物で7366億円と8週ぶりに売り越した。
これまでも先物売りは見られていたのだが、現物株を売り始めたのは転換したサインかと不安になる。
今週に売りが続くのかどうか注目したい。
先週は日経が+0.55%だったのに対し、マザーズ指数は+4.29%、東証グロース市場指数は+4.23%だった。
前の週にあまりにも下げすぎた反動が出たという印象。
今週も上げていくことができるか注目したい。
日本初の材料で相場が動くことは少ないのだが、今あるとしたら政府の為替介入ぐらいだろう。
しかしこの場合は円高で日経より堅調なTOPIXの押し下げ要因となるだろう。
米国市場の連動以外に為替にも注意を払う展開が続きそうだ。
その他
今週は中国で国家版PMI、民間製造業PMI、ISM製造業景況感指数が出てくる。
結果に期待はできないのだろうが、公表されるだけまだマシだろう。
「経済指標が悪ければ政府の景気対策が見込める」という話もあるが、ここまで出てきた対策が小規模で範囲も狭いことで大して期待はできなさそうだ。
中国では株式投資を奨励するような話が出ているようだが、そんな話が出るのは相当危ういのではないか。
中国経済の不振は今月とか今年といった程度の話ではなく、不動産を中心としたこれまでの中国経済の成長のさせ方が反映された構造的なものであると感じる。
先週はBRICsの会合があり加盟国の拡大が決定された。
欧米諸国とは距離を置きつつ勢力拡大するのが狙いの1つだろうし、BRICsの存在感は徐々に大きくなっていくのだろう。
ドル決済が縮小していき米債を保有する国も少なくなっていくはす。
現代の金融市場で米国抜きは到底考えられないが、存在感は薄まっていく方向にある。
いつかは米国の覇権が終わり、ドル決済が世界標準でなく、軍事力も世界一を維持できなくなる日が来るのだろう。
コロナ前までは米国の次は中国が覇権を握る雰囲気もあったが、現状の不動産問題などを見ていると成長を期待できる状況ではなさそうだ。
米国以外の主要先進国もここから再度覇権を取るとも考えにくい。
中国以外となると、やはり人口ボーナスが期待されるインドが世界の覇権を握っていくのだろうか。
今年来年でどうこうなるテーマではないが、この流れは5年後10年後にはもっと輪郭がはっきりしてくるだろう。