2023年5月に読んだり聴いたりした投資本やビジネス本を紹介します。
聴いた本はアマゾンのAudible(オーディブル)、読んだ本でUnlimited(アンリミテッド)対象と記載しているものは、本記事執筆時点での情報となります。
私の読書は新刊よりは興味のあるものを選んでおり、数年たっているもの含まれています。
オーディブルでのみ聴いたものは聴いた時の記憶で記載しています。
- 国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶(加谷 珪一)
- 数字でわかる! あの企業・店舗が儲けている仕組み~原価・店舗運営・従業員給与まで 鎌田 正文
- 教養としての金融危機 (講談社現代新書) 宮崎成人
- SHOE LIFE~「400億円」のスニーカーショップを作った男~ 本明 秀文
- 修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問 (PHPビジネス新書) 木村 尚敬
- 競争の番人 単行本(ソフトカバー) 新川 帆立
- スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険 谷川嘉浩
国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶(加谷 珪一)
昨年にオーディブルで聴いて、紙の書籍を買って5月に読んだ。
タイトルがキャッチーで、気になって読み始めた。
日本社会は表面的には近代化を達成しましたが、現実にはまだ前近代的なムラ社会の要素をたくさん残しています。近代的な経済システムと、社会のあちこちに残存している前近代的ムラ社会の制度がぶつかり合っており、このギャップが結果的に日本社会の不寛容さを生み出す元凶になっていると筆者は考えます。*1
日本経済の低迷に日本人の不寛容さや色濃く残る前近代的なムラ社会が寄与しているという著者独自の観点が軸となっている。
その著者の観点の解説として戦後の経済発展から失われた30年までの財政出動や規制緩和や金融政策といった日本経済や日本金融史の解説がある。
輸出型経済や国内消費型経済などの概論も語られ、経済学での消費についての解説など自分には役に立った。
後述する『教養としての金融危機』もそうなのだが、最近は過去の経済的な状況の解説を読んでいる。
当時の経済状況と社会の状況、そして株価の反応を知ることには意義があると思う。
著者の加谷珪一さんは投資家としても成功しつつ、何冊も経済関係の本を出している方で、この本をきっかけに下記の本などを読んだ。
投資家の著者の経済についての内容になるので、投資をしていく上で参考になる視点も多いだろう。
数字でわかる! あの企業・店舗が儲けている仕組み~原価・店舗運営・従業員給与まで 鎌田 正文
身近な企業がどういうビジネスモデルか、どういう構造で利益を生んでいるかを易しく解説してくれている書籍。
対象店舗や企業が身近にある小売店等なので、愛着も湧きやすく理解もしやすい。
下記のブログでも書いたが小売業は個人投資家が消費者として実際に店舗を確認でき、個別株投資の中でも親しみやすい分野だ。
私は財務や経理の知識に乏しくて、こういった初心者向けの解説書籍をよく読んでいる
。
株式投資の対象となる上場企業は、何かしらビジネスモデルや戦略で秀でている。
それは設立当初から戦略的にやってきた面もあるだろうし、成長を続ける中で強みを強化していった部分もあるだろう。
仕入れ値に工夫があるのか、売値に工夫があるのか、直営店なのかFCなのか。
各企業の特徴とその強みを知ることは、今後出てくる企業などのビジネスモデル評価にも役立つだろう。
教養としての金融危機 (講談社現代新書) 宮崎成人
オーディブルで聴いた後に紙の書籍を買った。
聴く前は「金融危機」でリーマンショックぐらいしか頭になかったがが、第一次世界大戦前から世界の金融史を金融危機につながる材料を中心に非常に長い時間軸で書かれていた。
リーマンショックは強欲な金融機関の暴走を許した金融制度の未熟さを示しているように感じていたが、世界大戦前の世界の金融制度はリーマンショックに比べて大幅に脆弱で不安定なものであった。
経済大国が英国から米国へと移る過程で起きた出来事、世界大戦の戦勝国と敗戦国の格差、大国アメリカの傍若無人な振る舞い、国ごとにある経済的トラウマ(日本の円高のような)。
世界株投資、FXをやる人は知っておくとファンダメンタルズの理解が強まるのではないだろうか。
SHOE LIFE~「400億円」のスニーカーショップを作った男~ 本明 秀文
これはオーディブルで聴いたのみ。
購入予定だがまだ書籍は読んでいない。
刊行時にスニーカーブームというか転売行為が横行していたように記憶している。
著者はエアマックス95からのスニーカーバブルの荒波を超えてきた、スニーカー販売で有名な本明秀文さん。
米国の靴の小売り大手フットロッカーに経営している会社を当時の為替レートで400億円で売却した話は話題になった。
(上の記事で知ったが今は大塚の大行列のおにぎり屋「ぼんご」の系列店を出しているのですね…)
私は中学時代にバスケットボール部でスラムダンクを見てバスケットを始めた口である。
当時お金が無い中でバッシュを見るためだけに何度も靴屋に行ったものだし、エアジョーダンなどのバッシュ、エアマックスなどのNIKEスニーカーにハマっていた。
これをカフェで書いている足元もエアジョーダン1MIDの赤黒で今でも好きなのだ。
ちなみに最近映画でエアジョーダン1の開発に迫る「AIR」を見て個人的なNIKE熱はさらに高まっている。
そんな背景がある自分だから、本明氏のフリーマーケットから始まる商売の話、並行輸入で小売業としてNIKEアカウントを取得するまでの道のりはより面白く感じたのだと思う。
時折挟まれる家族や健康のエピソードもビジネスだけでない、1人の人間としての人生として感じるものがあった。
米国でNIKEやフット・ロッカー(FL)に投資をしている人は、意外な角度から取引相手としての両社の姿を知ることもできると思う。
修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問 (PHPビジネス新書)
木村 尚敬
オーディブルで聴いた後に書籍を購入したが、書籍は後日読む予定。
これは今年になって著者の木村氏のダークサイド・スキルを読み、著者ぼれして同著者の本を買ったもの。
「大企業でしか使えない」などのレビューもあるのだが、旧態依然とした大組織では汎用性のある内容なのではないか。
旧態依然というか新卒採用をなん10年もやっている大組織では、どうしても若手・ミドル・役職になり切れなかった人・役職者などが発生する。
子会社が豊富にあって出向とはいえ誰もがマネジメント層になれるわけもなく、中間管理職として成果を出していく中では参考になる話も多いと思う。
「踏み絵」の話は共感することが多かった。
競争の番人 単行本(ソフトカバー) 新川 帆立
これは今回紹介する中で唯一の小説で、ドラマ化などでちょっと前に話題になった作品のようだ。
「公正取引委員会」の仕事小説ということで全く知らない世界なので手に取ってみた。
地方のウェディング業界でホテル、卸業者などに関わる話が展開されていく。
ただのウェディング業界ではなく、「地方の」というところが特にポイントだ。
書店で売っている帯には「弱くても闘え!」という言葉が確か書いてあって(記憶が自信なし)、この「戦う」というのも本書のテーマである。
踏みつけてくる相手に対して、怒れなくなっているのだ。倒しようがない敵に直面したとき、大きな理不尽に見舞われたとき、誰かを憎んでも苦しいだけだ。恨む気持ちはない、自分が悪かったと考えたほうが楽なのだ。
自分の足で立って戦うのは辛い。優秀な支配者の差配のもと駒のように動くほうがよっぽど安楽だ。けれどもそれが、幸せといえるのだろうか。
という文言があったりで、地方出身者の自分もいろいろと思うところがあった。
主人公は体育会系ノンキャリ女子で海外から帰国のキャリア男子とタッグを組んでストーリーが進行していく。
主人公自体も婚約者がいる状況だがハードなことに巻き込まれ、親と子(特に母と娘)といった重いエピソードもある。
読んでいてこれは続編があるだろうな、と思ったがとっくに続編が出ていた。
新作は着物業界のようで楽しみ。
買ってみたが未読。
スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険 谷川嘉浩
最後はオーディブルで聴いて、電子版を購入した作品。
『スマホ時代の哲学』とは安直なタイトルに思ってしまうのだが、哲学の本である。
著者の方は存じ上げなかったが、非常に読みやすい論の展開をする印象を持った。
「常時接続」「マルチタスク」「ネガティヴ・ケイパビリティ」
など哲学からカルチャーまで非常に幅広く論を展開し収斂していく書き方。
スマホがもたらしてくれる自由なり喜びもあれば、スマホに依存することで奪われてしまうものもある。
現代社会とスマホは切っても切れないもので、単なるデジタルデバイスを超え精神的な意味合いも強い。
米国のロビンフッダーはスマホがあるから生まれた投資家だし、これからも一定程度の投資家として残るだろう。
スマホだからこその取引の癖や傾向がある。
スマホには電話や通信機能があるが、そういった役割以上のものを現代人は抱いてしまっている。
これからの消費動向を担う世代は確実にスマホと共にあるので、これより先未来の社会・経済を考えていくヒントをくれるのではないかと思う。
*1:はじめに p8