今回のFOMCで決定したこと
- 政策金利の据え置き
米連邦公開市場委員会(FOMC)は、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%に据え置くことを決定。これで4会合連続の据え置き。 - 年内利下げ回数の見通し維持
FOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)でも、年内2回の利下げ(合計0.5%)が中央値として維持された。 - 経済見通しの修正
2025年10~12月期の実質経済成長率見通しは1.7%→1.4%へ下方修正、同期間の失業率は4.5%(前回より0.1ポイント上昇)と、景気見通しは全般的に悪化。 - インフレ見通しの引き上げ
個人消費支出(PCE)価格指数の見通しは、2025年末時点で3.0%、2026年末時点で2.4%、2027年に2.1%と高止まり傾向となりました。
決定内容で注目されたこと
- 「様子見」姿勢の強調
パウエル議長は会見で「現在の政策スタンスは良い立ち位置」と繰り返し、急な政策変更を否定。特に夏の間は関税政策の影響など不透明要因を見極めるため、積極的な利下げには動かず「完全様子見」姿勢を強調した。年内のFOMCは次回の7月含めて4回だが、少なくとも7月は利下げ見送りとなりそう。 - 関税政策のインフレ影響への警戒
トランプ政権の関税措置がインフレに及ぼす影響について、「夏にかけてさらに表れる」とし、短期的なインフレ期待が上昇していることを指摘。関税によるインフレ圧力は一時的に留まらず、長期化のリスクも警戒されているのでFRBは慎重姿勢を崩さないと見られる。 - FOMC内の意見分裂
年内2回以上の利下げを見込む委員が10名、据え置きが7名、1回の利下げが2名と、委員内で見方が分かれていることが明らかになった。今後も出てくるデータや関税影響により利下げ回数は1回か2回のどちらになるか不透明か。 - トランプ大統領の強い利下げ要求とFRBへの圧力
トランプ大統領はFOMCの結果が出る前に「2.5%ポイントの利下げがあると良い」と発言し、FRBへの利下げ圧力を強めている。もちろんFOMCの決定には影響を与えていないし、年内残り4回で7月は見送りが濃厚。慎重なFRBの態度から利下げ幅は0.25%になると見られると、大統領発言は現実的でなさそう。高めの球を投げてけん制していると思われる。
今回の決定から考える今後の見通し
- 7月FOMCでの利下げは見送り濃厚
関税政策の影響が夏場に本格化するとのパウエル議長の発言から、7月会合での利下げの可能性は低いとみられる。 - 利下げは最大でも年内2回か
市場は年内2回の利下げをメインシナリオとしている。FRBの見立てもほぼ一致だが、FRB内では「利下げ1回」の意見も「利下げなし」の意見も。9月以降の会合で景気や雇用の悪化が明確になれば、利下げが実施される可能性が高いが最大で2回というところか。 - インフレ・景気動向次第で柔軟対応
パウエル議長は「労働市場が大きく崩れない限り利下げ判断は難しい」としつつ、雇用悪化が明確になれば迅速に利下げ対応する姿勢も示した。今後の市場は雇用の数値が悪化した場合利下げを織り込む動きが強まりそう。 - 関税・原油・財政政策の不透明感がリスク
関税引き上げや中東情勢の悪化による原油高、大型財政法案の行方など、不透明要因が多く、これらがインフレや景気にどう影響するかが今後の金融政策のカギとなる。 - トランプ政権からの政治的圧力は続く見通し
トランプ大統領の利下げ要求やFRB議長人事への言及など、政治的圧力が高まる一方と思われる。しかしこれまで通りFRBは独立性を維持して慎重な政策運営を続ける構え。時期FRB議長を早期指名などした場合に、現FRBの意見が参考にされないリスクはある。
まとめ
今回のFOMCは「予想通りの金利据え置き」は事前予想通り。「年内2回利下げの見通し維持」は物価見通しを引き上げている中でハト派にも思えるが、パウエル議長の説明を聞いていると慎重な姿勢を継続するだろう。
FOMC結果と議長発言ともに買い材料にもならなかったが、強く売られる反応でもなかった。当日に金融市場に大きな波乱はなかったとは言えそう。パウエル議長は関税政策など不透明要因を見極めるため「様子見」姿勢を鮮明にし、慎重に見極める姿勢を維持することが再確認できた。今後は経済指標や外部環境を見ていくが、関税影響が夏以降に現れるとのことから7月FOMCも政策金利は現状維持となりそう。
トランプ大統領は決して「解任」とは言わないが、今後もSNS投稿や発言で自分が正しいという世論を形成していくと思われる。政治的圧力と金融政策の独立性のせめぎ合いが続く。
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